新潟の新しい未来を考える会
目次
2023年 3月25日 ゲンパツを考える市民集会
講師 中川秀直氏 河合弘之氏
講師 池内了氏 米山隆一氏
講師 小泉純一郎氏 原自連メンバー皆様
第12回「ゲンパツを考える市民集会」の報告
―中川秀直氏、河合弘之氏講演会―
2023年3月25日
新潟の新しい未来を考える会(片桐奈保美会長)主催の講演会が3月25日午後5時30分から、新潟市の万代市民会館で開かれ約120人が参加しました。今回は「ゲンバツを考える市民集会」として、「再稼働させて本当にいいの?」がメインテーマ。元自民党幹事長の中川秀直氏と脱原発弁護団全国連絡会共同代表で弁護士の河合弘之氏が講演しました。二人は小泉純一郎元首相が参加する「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)のメンバー。両氏ともに原発の危険性や使用済核燃料処理が不可能なことなどを指摘、ウクライナ侵攻で原発が攻撃されたことから国防上からも原発を廃止にすべきだと訴えました。
開会に当たり片桐会長が「一年前にウクライナ侵攻が始まり、知事選を迎えて原発を争点にしない選挙はありえないと私は立候補しました。柏崎原発が世界最大の原発で危険だ、と訴えました。福島原発は1基も廃炉になっていません。柏崎原発ではペーパードライバーのような運転経験のない人が働いています。これからも原発反対の運動を広げていましょう」などと挨拶しました。
講演会では中川氏がスライド、動画を示しながら「原発ゼロと人類」と題して講演しました。生物、地球の歴史から説き起こし原発が稼働した50年の歴史に話を進めました。27年前に務めた科学技術庁長官の経験を基に「高速増殖炉もんじゅの事故処理に当たりました。原子力の平和利用は資源のない日本にとって必要だと信じ、核燃料サイクルも疑いませんでした」と振り返りました。しかし、「東京電力福島第一原発事故で3基があっけなくメルトダウンし、考えを改めました。原発推進の間違いを反省し、責任を感じ、償いの意味でも原発ゼロに向け最善の努力したい」と心境を吐露しました。
現在の福島原発事故や核廃棄物などの現状についてデータを示しながら「全国17サイトで避難計画、体制があるところはありません。(放射性廃棄物の)本格的処分手段を確保せず、目先の便益に走ったのが現在の原発です。原子力の平和利用は虚構で、後世への影響を考える倫理観がありません」と言い切りました。
さらに世界が再生エネルギーに向かって走っている現状を紹介し、「3・11から12年。原発は事故後、何年か止まりましたが、日本では1日も停電は起きていません。しかも、太陽光、風力、地熱に恵まれた日本にはドイツの9倍の豊かな自然エネルギー資源があります」と強調、「一人ひとりが自らの安全、子孫の安全を自分事として考えることが必要です」と締めくくりました。
続いて全国の反原発裁判のリーダーでの河合弁護士が「日本の原発の全貌」と題して講演しました。まず原発は①重大事故は国を滅ぼす可能性がある②危険で処理に金がかかる使用済み核燃料を後世に押し付けるーと、2つの大きな問題を指摘した上、日本は世界の平均より130倍もの地震津波大国で、原発には適さないと警告しました。ではなぜ再稼働を進めるのか。河合氏は「今だけ、金だけ、自分だけの論理がまかり通る。しかも原発はメチャメチャもうかるからだ」と解説、原発を推進する経産省、ゼネコン、金融、電通、御用学者などの相関図「原子力ムラ」を示しながら説明しました。さらに昨年3月に提訴した小児甲状腺がん裁判の背景を解説しました。ウクライナ侵攻でザポリージャ原発が攻撃され欧州が震撼したことを受け「原発は自国に向けられた核兵器と同じ。国防上の弱点です」と強調、北朝鮮からのミサイルの標的になれば、若狭湾に7分半で着弾するため迎撃はとても困難だと指摘しました。
今後、原発反対をどうやって闘うか。河合氏は「反対し続けるしかない。裁判闘争と住民運動の連携が必要。(僕は)いずれ経済的理由から原発はなくなると思う。自然エネルギーが広がり、経済的にもうかるようになった。この世界の波は日本にも来る。経済原理からも原発はなくなるだろう」と希望を語りました。
その後、佐々木寛・新潟国際情報大学教授の司会のもと質疑応答に入りました。参加者から「日本の統治機構は機能不全になっていないか」との問いに対し中川氏は「いつの時代も生き詰まったところから新しいものが生まれます。国民の意思が新リーダーを生む。脱原発を掲げるところ(政党)が政権を取ると思います」などと答えました。「地方選で何をすべきか」との質問には中川氏は「次世代の人材をつくるのが大事だ。総理大臣が脱原発と言えばあっという間にできます。野党も今のようにあいまいな言い方ではなく一本に絞って選挙を仕掛けるくらいのことをやってほしい」などと述べました。
県の検証委員会の行方が注目されていることに関し河合氏は「総括委員会は存続させなければならない」と強調した上で、参加者が「池内了総括委員長が辞めさせられるとの見方が出ているが、河合さんならどう闘いますか」と質問が出されたのに対し、河合氏は「池内さんがトップになり心ある委員を再結集して池内了委員会をつくりきちんと総括して県民に示すべきだ」と提案しました。また、東電福島原発事故株主代表訴訟で13兆3210億円の損害賠償命令を勝ち取ったことを報告。福島の大津波を警告し続けた地震学者・島崎邦彦氏が出版した「3・11大津波の対策を邪魔した男たち」(青志社)の本を紹介、河合氏が企画した映画「原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち」の自主上映会を呼びかけました。
第11回池内了・米山隆一講演会
2022年7月23日
新潟の新しい未来を考える会(片桐奈保美会長)が7月23日午後、新潟市のアートホテルで開かれ約150人が参加しました。今回は「どうなる?原発検証委員会のゆくえ」がテーマ。原発の安全性を巡る県独自の検証委員会はどうなっているのか、「3つの検証委員会」で出された各検証結果を最終的にまとめる検証総括委員会の池内了委員長(名古屋大学名誉教授)と県検証委員会を立ち上げた元新潟県知事の米山隆一衆院議員の二人が、佐々木寛・新潟国際情報大学教授の司会のもと検証総括委員会の現状などを講演、報告しました。
開会に当たり片桐会長が「県知事選では皆さんに応援していただきましたが、残念ながら勝利はつかめませんでした。でも私が主張したことは絶対正しいと思っています。今回、県検証委員会の問題を聞く機会をつくりました。私も生き方を変えるいいスタートにできると思っています」などと挨拶しました。
検証総括委委員会は昨年1月、第2回が開かれて以降は開催されず、再開のメドは立っていません。池内委員長と県の考え方の違いが鮮明になり、主に5点に渡り意見が食い違っています。会合では県に情報開示請求を行った米山氏が開示された資料を基に説明しました。米山氏は「私の知事時代は1年半と短かったが、85枚の資料が作られた。花角知事になり4年間で30枚しか作られていません。実質的な討議はなく、何もしていないのが事実です」と解説しました。さらに米山知事時代にどういう目的で検証委員会を立ち上げたかをロードマップなども示して説明、「総括委員会は各委員会の論点を整理して議論する予定だった。年2回は開くイメージだった」と解説しました。さらに「花角知事になると、総括委員会は3つの検証委員会のとりまとめだけにして、(論議を)やらない方向になった」として指摘、さらに「開示資料の黒塗りのページで柏崎刈羽原発の安全性の検証は総括委員会が行うことではないとしているが、ナンセンスだ。間もなく避難委員会が閉じるそうですが、避難委員会は想定される被ばく量を示した避難計画を作っていません。検証委員会が論点だけを出し、(県の方針通りの)結論だけは県が示そうというのはおかしい」と県の方針を厳しく批判しました。
続いて池内氏がこれまでの検証委員会の経緯を詳しく説明しました。まず、池内氏は「昨年の第二回検証委員会以来、委員会が開かれていない経緯を私は記者会見で説明しようと思っていましたが、知事選もあり政治的だと取られるとわるいのでやめ、今回の機会に説明しようと思いました。県議会からも要請があれば、出向くつもりです」と講演依頼を受けた理由を説明しました。昨年1月の総括委員会では、タウンミーティングの必要性や技術委員会報告に論議の内容を付け加えることなどを主張したことを説明しました。その後、昨年6月6日に県と池内氏との意見の違いや論点整理のために担当局長が訪問したこと、7月15日に9月2日第三回総括委員会開催予告があった経緯を話しました。しかし、8月6日に県幹部3人に呼び出され「県が金を出して運営している委員会だから県の考えに従ってもらわないと困る」と言われ、拒否したことを明かしました。
花角知事との1回目の面談は9月2日。「県の考えに沿って運営してほしい」と要請されましたが、「県民のことを考えると県の方針に沿った総括はできないと拒否しました。その時知事は「それでは総括委委員会は開けませんね」と話し、私から「解任するなら解任して下さい」と申し出ると知事は「私は貴方をリスペクトしているので解任しません」と面談の内容を話しました。さらに10月22日に短時間の第二回の知事面談があり、池内氏が妥協案を示しましたが、知事は拒否し、その後は県との話し合いは途絶えています。
池内氏は経緯を説明した後に、『検証委員会 池内委員長のご意見と県の考え』という資料を基に5点に渡り、県との考え方の違いを説明しました。県民の意見を聞く機会について、県は総括委報告が出た後で説明するとし、池内氏は「県民の意見を反映するため総括委報告の前にタウンミーティングが必要」と主張しています。柏崎刈羽原発の安全性について池内氏は技術委員会報告は福島原発事故の検証だけで終わり不十分だと県と対立、東電の適格性については池内氏は「東電の技術的側面だけでなく安全文化の問題、さらに原発を動かす有能な人材が辞めおり、運転の問題もある」と指摘、原子力規制庁に任せるような県の姿勢と違いが鮮明になっています。また、最終報告書は3つの委員会の取りまとめでいいとする県に対し池内氏は各委員会でスルーされた問題も含め論議すべきだと述べました。委員会への知事出席にいては、池内氏は本来なら委員長に任せるべきだと持論を展開しました。
最後に池内氏は「県と意見が対立していますが、妥協するつもりはなく、今後どうなるか、見込みがつきません」と述べ。「もし、総括委員会が開かれない場合、「池内検証報告」のようなものを出したいと思っています。私の立場でこれまでの論議や勉強してきた結果をまとめ総括文書を作る準備を始めています」と決意を語りました。
その後、質疑応答に入り、会場の参加者から「二人の話と聞いて、検証委員会の現況がよく理解できた。お二人には県内を回って広めてほしい」「トランスサイエンスを高く掲げてほしい」など多くの意見が出されました。ウクライナ人の女性は「チェルノブイリ原発などが攻撃されるのはウクライナだけではなくヨーロッパの脅威です」と原発の危険性を訴えました。
第10回再稼働を問うシンポ報告
2022年4月10日
新潟の新しい未来を考える会(片桐奈保美会長)が小泉純一郎元首相らを招き企画したリレートークが4月10日午後、新潟市のANAクラウンプラザホテルで開かれ約550人が参加しました。今回は「3・11から11年 どうする原発再稼働!」をテーマに「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)のメンバーが多数参集、原発の危険性や再稼働阻止などを訴えました。
会合に先立ち6歳のときにチェルノブイリ原発事故で被ばくしたナターシャ・グジーさんがウクライナの民族楽器バンドゥーラを奏でながら故郷の歌を披露、「命が輝いていた街が死の街になりたくさんの人が死にました。同じ過ちを繰り返さないでください」と語りかけ、自作の曲を「ウクライナへの応援歌です」と歌い上げました。
開会に当たり片桐会長が「今日はどうする再稼働をテーマに原自連の皆さんに来ていただきました。ウクライナ戦争が報道されています。原発のような危険なものを残しては死ねません。私はそう思っています」などと挨拶しました。
壇上にはリレートークに駆けつけた小泉元首相ら11人が並び、まず小泉元首相が基調講演を行いました。「かつて原発反対運動をやっている人は左翼というのが大方の意見でした。2011年に起きた地震、津波、福島原発事故。原発3基が爆発し、仮に4基目が爆発していたら半径250キロ圏内の住民5000万人が避難する事態になっていました」「原発事故は起こしてはならないが、事故は必ず起きます。ソ連時代のチェルノブイリ、米国のリーマイル…。日本に福島事故前は54基の原発があり、そのうち40基が稼働、30%程度の電源を賄っていました。2013年から5年間、原発(稼働)はゼロでも一日も停電は起きていません。原発なしでやっていけることが証明されました」と強調。
さらに事故原因について「国会の事故調査委員会が事故の根源的な原因は原発の安全性を監視監督する原子力規制委員会が原発会社のとりこになり、いいなりになったことと結論を出しています」と解説、
5月の新潟知事選に立候補を予定している片桐会長に「片桐さんは若々しい。まず新潟から原発ゼロにしましょう。一緒に頑張っていこう」と激励しました。
続いてリレートークに入り、各人がそれぞれの分野。立場からスピーチをしました。トップバッターの慶應義塾大学名誉教授・金子勝氏が「新潟は原発をやめ、食料自給率を高め、地域で自立できるネットワーク型の経済をつくる必要があります。新潟が変わることで日本が変わるきっかけになります」と呼びかけました。
環境エネルギー政策研究所所長・飯田哲也氏は「太陽光、風力発電は10倍になり、日本とロシアを除く世界各国では太陽光発電が一番安い電力になりました。新潟は自然が豊かで再生エネルギーを使い地域を豊かにできます。次の知事選は日本を変える大事な選挙」と強調しました。
元経産省官僚の古賀茂明氏はドイツ大統領の話を紹介しながら「原発は周辺住民だけが危険な目に遭い、核のゴミ処理を次世代に回すなど論理的に間違っています」と述べ、「再生エネルギーは安くなり、蓄電池とセットで不安定さも克服できます。新潟は柏崎原発の送電線を使い再生エネルギーを送れます」と知事のリーダーシップに期待を寄せました。
原発差し止め裁判で全国を回る弁護士・河合弘之氏は「原発は国防上のアキレス腱。防衛が難しく、ミサイルが当たれば大惨事になる。北朝鮮のミサイルは柏崎原発まで15分で到達する。しかも柏崎原発は7基もある」と国防上の弱点を指摘しました。「経済、経営がわかる経済人で、子育ても経験している」片桐会長に期待をにじませました。
元自民党幹事長・中川秀直氏は「ウクライナ危機で新しい冷戦が始まります。日本地図をひっくり返すと、日本の最前線は佐渡と新潟県です。ロシアが大変な事態を迎え、新しいウクライナ平和戦略を示すくことになるだろう。片桐さんの情熱が実を結ぶよう、奇跡を起こそう」と力を込めました。
城南信用金庫顧問・吉原毅氏は「中所企業の社長と付き合ってきたが、片桐さんの会社は無借金経営、しかも50年間赤字なしと聞きました。金融マンとして尊敬しています」と語り、「福島原発に事故では東京、神奈川も汚染しました。新潟は米を作りながら太陽光で儲けるソーラーシェアリングで豊かになれるはず」と提案しました。
音楽評論家の湯川れい子さんは環境運動や政府の審議会委員の経験を語り「女性の時代と軽く言いますが、原発を推進してきたのは男たちです。日本海側に27基の原発が並んでいて攻撃されたらどこへ逃げるのですか、心配です」「いろんな意思決定機関には最低でも女性が3分の1は入ってほしい。危ない原発を止められるのは片桐さん以外にいません」と強調しました。
元滋賀県知事の嘉田由紀子さんは環境問題を訴え現職を破った知事選の経験を話しながら「原発もダム問題も同じ。知事は総理大臣より権限があり、トップダウンで変えられます。片桐さんを応援して新潟から日本を変えてほしい」と女性知事経験者としてエールを送りました。
旧大潟町出身で東電株主代表訴訟事務局長の木村結さんは「東電と株主訴訟を続けてきて、東電の経営者はうそつきだとわかりました」と語り、兵庫県丹波篠山市が市独自でヨウ素剤を配布している例を紹介しながら「片桐さんは県民の命を守る知事にふさわしい」と述べました。
最後に初代林家三平の妻・海老名香葉子さんからのメッセージを林家まる子さんが代読しました。
最後に小泉元首相が締めの挨拶で「将来必ず原発ゼロにする日本にしたい。選挙はやってみないとわからない。最後まで片桐さんをお願いします」と語り、片桐会長が「身の引き締まる思い。次世代のため新潟をよくしなければ死ねません。責任があります」と決意とお礼の言葉を述べました。